配達員も店も忙しいのに、なぜフードデリバリー運営会社は赤字になるのか?

Foodpandaは2022年、Woltは2026年に日本でのサービスを終了。そしてmenuも2026年9月末での終了が発表されました。

街では配達員が走り回り、人気店には次々と注文が入っています。一見すると、フードデリバリーは活況に見えますが、なぜ運営会社は赤字になり、撤退してしまうのか、調べた結果を残しておきます。

注文が多くても利益が残るとは限らない

フードデリバリー運営会社の主な収入は、加盟店から受け取る手数料と、ユーザーが支払う配達料やサービス料です。

品物代が2,500円の場合。

加盟店手数料を30%と仮定すると、運営会社に入るのは750円です。さらにユーザーから配達料やサービス料を受け取ります。

しかし、ここから次の費用を支払います。

  • 配達員への報酬
  • クーポンや送料無料キャンペーン
  • クレジットカードなどの決済手数料
  • アプリやサーバーの開発・維持費
  • 注文トラブルへの返金
  • カスタマーサポートの人件費
  • テレビCMやネット広告などの宣伝費

特に大きいのが、配達員への報酬とユーザー獲得のための割引や宣伝費、1件で1,000円前後の売上があっても、配達員への報酬や各種費用を差し引けば、ほとんど利益が残らないことがざらにあると思います。

さらに、クーポンを使えば、注文を受けるほど赤字になる場合もあります。

つまり、1件の注文から会社が得る手数料より、1件を成立させるためのコストが高くなりやすいからです。

配達員が忙しいのは「注文が集中する時間」だけ

ランチの昼やディナーの夜のピーク時間には注文が連続して入りますが、運営会社は注文が少ない時間帯や地域でも、サービスを維持する必要があります。ユーザーがアプリを開いたときに配達員がいなければ、注文してもらえないからです。

注文が少ない時間には多くの配達員が待機することになります。配達員が忙しく見える地域の裏側で、十分な注文数を確保できていない地域も存在します。

一部の店や配達員が忙しいことと、サービス全体が黒字であることは別の話なのです。

店が忙しくても運営会社の利益率は低い

運営会社は1件の注文を成立させるために、ユーザー、加盟店、配達員の三者を同時に管理しなければなりません。

注文の遅れ、商品の不足、住所間違い、配達員不足、キャンセル、返金などのトラブルにも対応する必要があります。(私も何度かサポートに連絡したことがある。)

注文数が増えるほど売上は増えますが、配達報酬やサポート費用も増えるため、一般的なWebサービスのように「ユーザーが増えれば一気に利益が増える」とは限りません。

Amazonなど通販事業は実はかなり面倒なサービスです。サイトやアプリで商品を並べ、ユーザーが料金を支払って、店が注文を受けて配達業者に配送を依頼、配達先のお客さんに商品が数日後届いてやっと入金です。

フードデリバリーの場合、上記の通販の流れを一件数十分で配達完了を連続でこなしていきます。つまり、通販の高速回転です。

フードデリバリーはITサービスであると同時に、非常に手間のかかる物流事業でもあります。

ユーザーを奪い合うための値下げ競争

日本ではUber Eatsや出前館など、複数のサービスが同じユーザー、加盟店、配達員を奪い合っています。ユーザーは、その日のクーポンや価格を比較して、最も安いアプリで注文します。

配達員も複数のアプリを登録し、条件のよいサービスを選びます。加盟店も複数のサービスへ同時に出店できます。

つまり、運営会社が多額の広告費をかけてユーザーや配達員を集めても、簡単に他社へ移られてしまいます。

これを防ぐためにクーポンを配り、配達料を下げ、配達員には追加報酬を出す。その結果、注文数は増えても赤字が拡大するという状況が生まれます。

出前館の場合、2026年8月期第3四半期累計では売上高282.9億円に対して売上原価281.5億円、原価率99.5%まで上昇です。

配達員への報酬などが売上原価に含まれており、この段階で売上がほぼ消えています。

もう一つ強烈なのが広告費です。

新規客に、

「初回2,000円OFF」
「送料無料」
「○回まで割引」

を配ってユーザーを獲得しても、その人がキャンペーン終了後に他のサービスへ戻ったら、獲得費用を回収できません。

黒字化には「注文密度」が必要

同じ10万件の注文でも、

東京の狭い地域に10万件なら、 配達員が短距離で次々運べる

北海道など広い範囲に10万件なら、 店まで遠い、客まで遠い、次の店も遠い

ではコストが全然違います。

だからフーデリは単なる「注文数」の商売ではなく、一定地域にどれだけ注文・店・配達員を高密度に集められるかが非常に重要な業態です。

最後に残るのは資金力のある会社

フードデリバリーは、ユーザー、加盟店、配達員の三者をそろえ、十分な注文密度になるまで赤字を負担し続ける必要があるビジネスです。

サービス開始直後は、クーポンや高額報酬によって急速にユーザーを増やせます。しかし、割引を減らせば注文が減り、配達員報酬を下げれば配達員が離れます。

この状態で競争を続けられるのは、長期間の赤字に耐えられる資金力と、すでに大きなシェアを持つ会社です。

配達員が走り回り、店に注文が殺到していても、運営会社に利益が残っているとは限りません。

フードデリバリー業界で相次ぐ撤退は、需要がないからではなく、需要を利益に変えることが非常に難しいビジネスだからです。

私が以前経験した「20km離れた町までキャンペーン目当てで行ったのに注文ゼロ」という話も、まさにこれです。ユーザー、加盟店、配達員のどれかが足りない地域ではサービスが成立しにくい。

そしてUberが強い理由もここです。規模が大きければ、同じ地域で次々注文を配達員に割り振れるので、1件当たりの配送効率が上がります。小さい会社ほど注文密度が低く、その不足を高額キャンペーンや配達員インセンティブで補う必要があり、さらに苦しくなる。

 

Woltやmenuが撤退したの、需要がないからではなく、「需要はあっても、その需要を利益に変えるのが異常に難しい」奇妙な構造だからです。